ある産婦人科医のひとりごと: 産褥精神病、マタニティーブルーズ
産褥精神病とは分娩を契機に発病する精神病をさす。
● 産褥精神病の特徴:
・ 発症の頻度は約3%と推定されている。
・ 分娩後数日以内に発病し概して予後良好である
・ 再度の分娩や妊娠によって再発しやすい
・ 長期予後は良好である
・ 激しい情動的興奮を伴うこともあり緊急入院する症例も多い
● 産後うつ病
・ 頻度:産褥精神病の約半数
・ 産後3ヵ月以内の発現頻度がそれ以降と比較して高い
・ 罹患期間が短い
・ 罪悪感、焦燥感の出現頻度が高い
・ 身体的症状が目立つ
・ 多くは2~6ヵ月で軽快するが、1年以上の長期経過を示す場合もある
・ 自殺企図や乳児に対する危険がある場合は精神科による緊急介入が必要となる
・ うつ病スクリーニングにエジンバラ産後うつ病自己質問表を使用する。
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(表) エジンバラ産後うつ病調査表
ご出産おめでとうございます.ご出産から今までの間どのようにお感じになったかをおしらせください.今日だけでなく,過去7日問にあなたが感じられたことにもっとも近い答えにアンダーラインを引いてください.必ず10項目に答えてください.
しゃっくり赤ちゃんの胎児を引き起こす
例)私は幸せである。
・ たいていそうです。
・ いつもそうではない。
・ 全く幸せではない。
"たいていそうです"と答えた場合は過去7日間のことを言います。このような方法で質問にお答えください。
[質問]
1.笑うことができるし、物事のおもしろい面もわかった。
(0)いつもと同様にできた。
(1)あまりできなかった。
(2)明らかにできなかった。
(3)全<できなかった。
2.物事を楽しみにして待った。
(0)いつもと同様にできた。
(1)あまりできなかった。
(2)明らかにできなかった。
(3)ほとんどできなかった。
3.物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた。
(3)はい、たいていそうだった。
(2)はい、時々そうだった。
(1)いいえ、あまりたびたびではない。
(0)いいえ、そうではなかった。
4.はっきりした理由もないのに不安になったり心配した。
(0)いいえ、そうではなかった。
(1)ほとんどそうではなかった。
(2)はい、時々あった。
(3)はい、しょっちゅうあった。
1q4 - Q6 PRの痛み
5.はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた。
(3)はい、しょっちゅうあった。
(2)はい、時々あった。
(1)いいえ、めったになかった。
(0)いいえ、全くなかった。
6.することがたくさんあって大変だった。
(3)はい、たいてい対処できなかった。
(2)はい、いつものようにはうまく対処しなかった。
(1)いいえ、たいていうま<対処した。
(0)いいえ、普段どおりに対処した。
7.不幸せなので,眠りにくかった。
(3)はい、ほとんどそうだった。
(2)はい、時々そうだった。
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった。
(0)いいえ、全<なかった。
8.悲しくなったり惨めになった。
(3)はい、たいていそうだった。
(2)はい、かなりしばしばそうだった。
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった。
(0)いいえ、全くそうではなかった。
9.不幸せで,泣けてきた。
(3)はい、たいていそうだった。
(2)はい、かなりしばしばそうだった。
(1)ほんの時々あった。
(0)いいえ、全くそうではなかった。
ナタールうつ病や添付ファイルを投稿する
10.自分白身を傷つけるのではないかという考えが浮かんできた。
(3)はい、かなりしばしばそうだった。
(2)時々そうだった。
(1)めったになかった。
(0)全<なかった。
( )の数字は配点を示す
(Cox JL et al., Br J Psychiatry,1987)
この表を用いた検討で欧米では10~13点を区分点としているが、わが国の女性の場合には、9点以上を産後うつ病の疑いとして取り扱うのが適切とされている。
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● マタニティーブルーズ
産後における一過性の女性の正常反応であり、産褥うつ病とは異なる。産褥うつ病への移行と産褥精神病の初発症状との鑑別が必要である。
マタニティーブルーズの特徴:
1. 分娩後3~10日目頃の産褥婦に生じる軽度の情緒不安定。数時間から数日間持続するが、自然に消失する。
2. 産褥婦の50~80%に認める。
3. 特徴的症状は、
涙もろさ
落胆あるいは軽度の抑うつ
不安
軽度の困惑(集中力不全、忘れっぽさなど)
心気的傾向、疲労、不眠、頭痛などを伴う
4. 高率の出現頻度と出現期間・期間の規則性から、分娩後の内分泌変化(エストロゲン、プロゲステロンの急減など)に対応するとの見解が有力
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問題
産褥1ヵ月健診で正しいのはどれか。1つ選べ。
a 子宮底を恥骨上に触れる。
b うつ病スクリーニングにエジンバラ質問表を使用する。
c 凝血塊の排出がみられる。
d 末梢血白血球数12000/μLである。
e マタニティーブルーズの発症がピークとなる。
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正解:b
a 子宮は分娩1ヵ月後にはほぼ非妊時の大きさとなる。
b 産後うつ病を早期に診断するためにわが国でもCox et al.によって提唱された自己質問表(エジンバラ産後うつ病自己質問表)が用いられている。
e マタニティーブルーズは分娩直後から産後7~10日以内にみられ、主に2~4日を発症のピークとする。
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