2012年5月20日日曜日

CTの特徴(CTを読んでみたい人のために)


脳の働きと分布について(CT図との対応)のページへ戻る

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 CTもMRIも、画面の向かって左が、患者さんの右、上が前面、下が背面です。つまり、患者さんを足の方から眺めているような断面図になります。かつては、脳外科のCTのみ、画面の向かって左が、患者さんの左と、頭から眺めるような向きで撮っていました。というのは、脳外科医が手術するときは、どうしても、頭から見る向きになるからです。しかし、MRIや他科のCTと向きが異なるため、混乱を避けるため、10年くらい前から『患者さんの足の方から見た向き』に統一されました。

 ところで、救急外来では、来院時の症状で大体の障害部位が予測されます。

 @『仕事中、急に右半身に力が入らなくなり、呂律が回っていないとのことで、救急要請、来院時、右片麻痺、失語あり』というと、『左被殻出血』、『不整� �(心房細動)』があると、『左中大脳動脈領域の塞栓症(脳梗塞)』、
或いは、A『昏睡状態で搬送された患者さんで、血圧が180、目を見ると両眼とも左上方を睨んでいる(左共同偏視)』というと、『大きな左被殻出血』か『右小脳出血』かなあなどと、CTを撮る前から大体分かってしまいます。
なぜかというと、さきのページでも掲載したように、脳の分担領域があるからです。

@の場合は、右片麻痺が出て、言語野の近く、さらに脳出血、脳梗塞の好発部位である『被殻』ということになりますし、心房細動があれば、塞栓がとびやすい状態のため、心原性塞栓を考えます。


黒と青あざの爪痛みなし

Aの場合は、意識障害があるくらいなので、血腫は大きいか、もしくは、意識中枢がある脳幹部近辺の病変である小脳、橋(脳幹)などと考えます。また、大脳の前方に『対側の注視中枢』があり、これは、脳幹部で半対側に交差し『同側の注視中枢』と繋がっています。つまり、これらの障害で目の向きが変わり、大脳なら『対側注視が傷害』され出血した方向へ両目が向き、小脳では『同側への注視が傷害』されることで、出血と反対側に両目が向くという仕組みです。学生の頃は国家試験の前に、『大脳は出血を睨む』などと覚えさせられたものです。

 以下は、以前、看護師さんの勉強会用に作ったプリントです。

色について

@CTで白い(ろい)ところを高吸収域という:出血(ゅっけつ)、骨、石灰化、繊維、金属
ACTで黒い(Kuroi)ところを低吸収域という:梗塞(Kousoku)、脳脊髄液(水)、脂肪

形について

@急性硬膜下(カ)血腫:三日(カ)月型、( )吸収域
A急性硬膜外血腫:凸レンズ型、( )吸収域
B慢性硬膜下血腫:三日月型〜凸レンズ型、高〜低吸収域
答えは最後

時期について

@脳出血は急性期から明瞭、高吸収域(白)として描出される。2週間くらいから吸収されてくると次第に不明瞭化。
A脳梗塞はCTで明らかに低吸収域(黒)として認められるのは、発症から8時間ほど経過してから認められるため、急性期は分からないことがある。
B大きな脳梗塞の場合、急性期に血流が再開通すると、3〜5日経過し出血性梗塞となることがある。低吸収域(黒)の周囲や内部に点状もしくは帯状のやや高吸収域を認める。
C脳出血、脳梗塞ともに、慢性期に入り2〜3ヶ月以上経過すると、脳組織が吸収され跡に脳脊髄液(水)がたまるので、どちらも低吸収域(黒)となる。


kemoと便秘

危険な兆候

@脳浮腫:脳内の病変周囲で脳自体が腫れると低吸収域(黒)として認められる。
A脳ヘルニア:大きな血腫や著明な脳浮腫により、脳が隔壁(大脳鎌、小脳テント)を越えてせり出してくる。
B脳幹部圧迫:小脳病変や、小脳テントを越えるようなテント切痕(鉤ヘルニア)を起こすと脳幹が圧迫され意識障害、呼吸抑制をきたす。

いろいろなCT所見(No.12、14は前図と比較のためのMRIです)

 ややこしいことはこのくらいにして、実際のCTを見てみましょう。 画面上にポインターを持ってくると、『診断と主症状』が出るように設定してありますが、印刷をしたときのことを考えて、下部に『答え』を掲載しておきます。


symtoms大人のにきび

15の数日後)" vspace="10" hspace="10"/>


答え
形について:@高、A高、
1:右急性硬膜下血腫:意識障害(昏睡)、 2:外傷性くも膜下出血:頭痛、 3:右前頭棘脳挫傷:頭痛、 4:両側前頭極脳挫傷:頭痛、嗅覚障害(臭いが分からない)、 5:脳挫傷(左前頭蓋底脳内血腫):頭痛、 6:左慢性硬膜下血腫:頭痛、右片麻痺、 7:左慢性硬膜下血腫:痴呆、右片麻痺、 8:両側慢性硬膜下血腫:痴呆、四肢筋力低下、 9:右慢性硬膜下血腫:頭痛、左片麻痺、 10:左慢性硬膜下血腫:頭痛、右片麻痺、 11:左被殻梗塞:失語、左共同偏視(左を睨む)、 12:左被殻梗塞(MRI):No.11と同じ症例、 13:中脳梗塞:眩暈、構語障害(呂律が回れない)CTでは分からない、 14:中脳梗塞(MRI):No.13と同じ症例、 15:右大脳半球脳梗塞:左片麻痺、左同名半盲(左半分が見えない)、 16:出血性梗塞:左片麻痺、意識障害(No.15の数日後)、 17:多発性微小脳梗塞:無症状、 18:多発性微小脳梗塞:無症状、 19:小脳梗塞(1部出血性):眩暈、意識障害、右半身運動失調、 20:左被殻出血:右片麻痺、構語障害(呂律が回らない)、 21:右視床出血:左片麻痺、慢性期は左半身疼痛(視床痛)、 22:混合性(左視床、被殻)出血脳室穿破:意識障害(昏睡)、右片麻痺、左共同偏視(左を睨む)、 23:左側頭葉皮質下出血:右片麻痺、失語、右同名半盲(右半分が見えない)、 24:くも膜下出血:頭痛、 25:くも膜下出血:頭痛、 26:くも膜下出血(脳内血腫合併):頭痛、 27:くも膜下出血(急性水頭症合併):頭痛、痴呆、歩行障害、尿失禁、 まとめ:くも膜下出血、脳室穿破(脳内血腫、急性硬膜下血腫合併、帯状回ヘルニア):意識障害(昏睡)、瞳孔散大



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