第32号
『麻疹』(はしか)の話
一歳を超えたお子さんの麻疹の予防接種はもう済みましたか。麻疹は日本全国で年間10万人以上の患者さんがおり、死亡例は90例にものぼります。その他、脳炎、肺炎を起こす事もあり、こどもの病気の中では重い病気です。患者さんの鼻汁や痰から飛まつ感染によって感染します。非常に感染力が強く、予防接種をしていない人のほとんどが、かかってしまいます。10日ほどの潜伏期間があり、熱、鼻汁、咳が出て、結膜炎が起こります。4日目頃少し熱が下がリますが、すぐに高熱が出現しそれと同時に顔、首、体幹、手足へと発疹が広がります。5日ほどして発疹が茶色くなり、熱が下がっていき快方に向かいます。食事が取れず、脱水症状がひどくなったり、咳が激しく肺炎を起こす事もあり、入院が必要になる事 もしばしばです。
ウィルスをやっつける薬はなく、かからないためには、予防接種をするほかありません。麻疹にかかる人の95%は予防接種をしていない人なのです。日本の予防接種の接種率は約80%程度で、成人でも、接種をしていなかったり、かかった事がない人で、年に数千人の患者さんが出ています。ほとんど全ての人が予防接種をうけているアメリカでは、患者は年数十人程度です。しかも麻疹の潜伏期間中に日本を離れた日本人海外旅行者が現地で発症し、現地で麻疹を流行させた事例もあり、日本は麻疹の輸出国であるという不名誉な指摘もあります。
お子さんが一歳を過ぎたら、まず麻疹の予防接種をうけましょう。お子さんのため、日本のために。麻疹撲滅の日まで。
母乳について
母乳とミルクは違う?
育児用ミルクは、牛乳を材料として作られたもので、赤ちゃんの未熟な消化器や腎臓に負担をかけないようにしたり、成長・発達の程度も母乳に近づけるように、現在の科学でできる限りの成分調整がされています。
ただひとつ違うとすると、母乳にはお母さんからの免疫が含まれていること。この免疫は赤ちゃんの腸管を守り、下痢を起こす細菌やウィルスの侵入や増殖をくい止めると言われています。特に、初乳から生後一ヶ月までに多く含まれます。
母乳不足のサイン
たいていの場合、片方5分ずつ、10分で 1回量の8割近くを飲んでしまいます。
あとの5分ぐらいは、味わっている時間です。
次のような場合は母乳不足を考えましょう。
@ 30分以上、おっぱいから離れない。
A 3時間以内でよく泣く。
B体重の増えが悪い。
Cおっぱいを吸う力が弱い。
ミルクの足し方
@ 授乳時に毎回ミルクを足す。
→比較的母乳不足が軽い場合
毎回母乳を吸わせた後にミルクを足す。
毎回おっぱいを吸う刺激で、おっぱいは長く続けられるでしょう。
A 母乳とミルクを交互の与える。
→母乳がかなり不足している場合
母乳は比較的早く、出なくなってしまうようです。
B 仕事中はミルクを、それ以外は母乳。
冷凍母乳の方法がとれれば、母乳栄養は続けられますが負担は結構大きいでしょう。
母乳の保存について
母乳は無菌状態ではありません。ですから、しぼった母乳には、必ずと言っていいほど、細菌が入っています。室温ではますます細菌が増えます。冷蔵・冷凍保存が絶対ですが、 冷蔵庫でも安心できるのは6時間程度、それでも冷蔵庫の開け閉めが多いと、庫内の温度が上がるので注意が必要です。
冷凍の場合、マイナス20℃以下で保存できれば成分に変化がないのですが、長期にわたる場合には、やはり温度管理が難しいでしょう。
解凍も、電子レンジは禁物です。母乳中の免疫やビタミン類が壊れてしまいます。 水か、急ぐ時は人肌程度のぬるま湯で解凍しましょう。
お餅を食べるとおっぱいがたくさん出る?
昔、思うように栄養がとれなかった頃、お餅はすぐにエネルギーになり重宝がられました。また、同じ量のご飯に比べて1.4倍もエネルギー量が多いことから、そのように言われています。しかし現在の食生活では、そのような心配はなく、バランスの良い食事やおやつを、おなかのすき具合にあわせてとり、お茶などで水分も摂取する事が大切です。そして、授乳後は残ったおっぱいをしぼってカラにし、家事や育児の疲れをためないよう過ごす事がおっぱいを出す秘訣かも。
第33号
『小児の反復性の頭痛』
こどもの病気には、発疹を伴う病気が多くあります。発熱や、咳、鼻水と同じように、病気のサインである事も多くあります。
では、病気と発疹との間にはどんな関係があるのでしょうか。発疹には大きく4つあります。
第一は、発熱などその病気の症状である場合。第二には、病気が治る頃に出現する場合。第三には、汗疹、蕁麻疹など直接病気と関係無く出てくる場合。第四は、薬などの副作用や、アレルギー反応で出てくる場合です。第一の場合の代表は、麻疹、風疹、水痘、溶連菌感染症、川崎病、手足口病です。いずれにしても早く医者に見せた方が良い病気です。第二の場合は、突発性発疹、伝染性紅斑(りんご病)、エンテロウィルス感染症な� ��で、発疹に気が付いたときは、ほとんど治っていて、心配ない状態です。第三は、病気などで、入浴ができなかったり、汗をかいたりするために起こる皮膚のトラブルです。また、体調が悪く、普段食べても大丈夫なのにたまたま食べた時に蕁麻疹ができてしまうこともしばしばあります。かゆみを伴なう事が多く、塗り薬を使うか、スキンケアだけで治ります。そして第四の場合は、病気の治療に使った薬などの副作用や、アレルギー反応で、起こる場合です。人により体質が違うため、出たり出なかったりします。
発疹の診断はとても難しい場合があります。逆に発疹から病気の診断ができることがあります。気が付いたときには、早めに受診しましょう。特に熱と同時に出現する発疹は病気との関係が強く疑われます。早 めに医者にかかりましょう。
こどもと食事
離乳食が始まると、楽しいはずの食事中に、ついイライラしてしまいます。でも、悩みはみんな同じようです。悩みの1位、2位の項目は2歳児に多く、3位、4位、5位は3歳児に多いようです。
子供(1〜4歳)を持つママの食事の悩み
1位 | 遊び食い | 43.4% |
2位 | むら食い | 29.2% |
3位 | 偏食 | 24.9% |
4位 | 食べるのに時間がかかる | 20.6% |
5位 | 小食 | 17.9% |
遊び食い…食べ物にさわったり、こねまわしたり、スプーンなどで他の食器に移したり、これらは、子どもなりに食事の自立のための練習だと言われています。
むら食い…2〜3歳の子どもは、他に興味のあることや、やりたいことがあると、食事に目をむけないことがしばしばです。ただし、おなかがすけば、必ず食べるので無理じいしないことです。
食べることが好きになるために
☆早寝、早起き
正しい食のリズムをつけましょう。
朝寝坊をして、朝食の時間が遅くなると、一日の食事のリズムが徐々にずれていき、決まった時間におなかがすかなくなります。
☆遊ぶ時間、食べる時間の区別をつけよう
家の中で静かに遊んでいると、つい食べる事(お菓子)に向いがちです。ママも要求に負けてしまいがちではありませんか?
☆ジュースや牛乳はほどほどに
水分補給は、水(白湯)、お茶、麦茶などが良いでしょう。ジュースや牛乳は、時間や量を決めて飲ませましょう。
「牛乳を飲んでいるから大丈夫」ではありません。牛乳だけでは、栄養が偏り、大きくなれません。
☆みんなで楽しい食卓を
誰かが食べているのを見ていると、自分も食べたくなるものです。いつも食べないものでもみんなと一緒だと食べられるかも
しれません。「離乳食だから、」とお膳を別にせず、一緒に食卓に並べてみては?
第35号
『とびひ』の話
とびひは、夏、乳幼児に多く見られる皮膚の病気で、伝染性膿痂疹と言います。虫刺され、アトピー性皮膚炎に伴う引っかき傷や擦り傷などに、黄色ブドウ球菌や溶連菌が感染して起こります。最初、傷の部分の皮膚にかゆみを伴う水ぶくれができ、掻き壊して水ぶくれが破れるとびらんとなります。水ぶくれの中の細菌が飛び散ったり、引っかいた指について、その手で別のところを掻いたりして、いろんなところに飛び火していきます。
抗生物質の内服と外用が必要です。とびひかなと思ったら、皮膚科や小児科に早めに受診しましょう。湿疹がひどい場合は、治るまで保育園、幼� �園、学校はお休みしなければなりません。プールや大勢で入るお風呂(クアハウスや温泉など)も控えましょう。お家では、次のようなことに注意しましょう。
・ 石鹸をよく泡立てて手を洗い、シャワーやかけ湯で石鹸をよく落とします。湯ぶねにはつからない方が良いでしょう。
また、他の子供と一緒に入らない方が良いでしょう。タオルは他の人と別々のものを使いましょう。
・薬を塗ったらジクジクしているところは、清潔なガーゼなどでおおい、他の部分にうつらないようにします。
・衣類は膿などでよごれたら、すぐにきれいなものに着替えましょう。洗濯は他の人と一緒でかまいません。
普段から、毎日お風呂に入り石鹸を使ってよく洗い、湿疹、虫刺され、擦り傷などは早めに治療しておくことも予防の一つです。原因となる細菌は、鼻に住みついています。鼻いじりにも注意しましょう。
発熱と冷却剤
いわゆる冷えピタ・アイスノンシートなど
氷枕や濡れタオルよりずっと手軽に使えて便利ですよね。小児科の外来にも冷却剤を貼ったお子さんが多く見られます。私たちも病児保育室や点滴中で熱の高いお子さんには、必要に応じて使っています。熱を吸収する、とはありますが熱がどうして出るのか考えると、冷却剤で熱は下がりません。熱による不快な気持ちをとってあげて、「冷たくて気持ちイイよ」という気持ちで貼ってあげると良いと思います。ですから、貼るのをいやがる子に無理に使う必要もありません。
上手に利用するためには
冷却剤はタイミング良く使うと、効果的です。